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白ウサギの長い一日2  

何年越しかの第二弾。





人魚姫たちの部屋を後にした白ウサギは、次にどの部屋に行こうかと考えた。
キャラクターズ達が生活しているこの宿舎は全室三人部屋となっており、どの部屋も基本的に二人から三人が入居している。
例外として、巨人族や身体的に特殊な属性を備えている者(氷や炎で構成された身体)が、その特性に適した改造を施された部屋に一人で入居することもあるが、原則として複数人数で一部屋を使うことになっているのだ。

「さて、ボクの知り合い連中はっと……」

そう呟くと白ウサギは静かに目を閉じた。
するとその小さな体の周辺が青白く輝き始める。
やがてその輝きが一定の法則性を持った紋様に変化していき、空中に「何か」を表示した。
それは文字列のような、または何かの図形のようにも見えるが、明らかにパーガトリープライムで使われている一般的な表記とはかけ離れたものであることは間違いなかった。

「ふーん……同じフロアに入居しているのは……
 白雪姫にヘンゼル、グレーテル……赤ずきん、シンデレラ、ゲルダかぁ」

そう言って空中に映し出された光の図形を、確認するように軽くなぞる。
その瞬間、白ウサギを囲むように輝きを放っていた文字列が弾け飛び、そして消え去った。

……たかだか部屋割りと名簿の確認のために、ここまで大仰な演出を見せつけるのは、この小さなウサギをおいて他にいないだろう。

「一番近いのは白雪姫たちの部屋か。とりあえず行ってみようっと」

誰に言うでもなくそう呟くと、白ウサギは頭から生えた耳をぴょこぴょこ揺らしながら廊下を歩き出した。




「大歓迎なのですっ!ようこそなのですっ!」

「ようこそー!うっさうさー!」

「よ……よろしく……」

入室から20秒後。
白ウサギは白雪姫とグレーテルの二人に「了承」の二文字を突き付けられていた。
詳しい事情を語る前、「頼みがあるんだけどさ。今晩からこの部屋に泊めてくれないかな?」と口にしただけでこれである。
ああ、そういえばこの二人はこうだったと、白ウサギは改めて思いなおす。
理屈や常識は二の次で、グイグイ突っ込んでくる猪突猛進タイプ。それがこの二人なのだということを。
こういう手合いはエネミーとの戦いにおいては頼もしい限りだが、慎重さが求められる場面では甚だ危険な存在となる。

もっとも、今回の件に関してはそれが良い方に働いたのではないか?
何とか都合よく解釈しようとする白ウサギであった。

「で、でもちょっと待ってください……」

そんな風に、誰もが幸せな結末を迎えようとしていた時。
若干腰の引けた声でそれに異を唱える者がいた。

「この宿舎の部屋って、最大三人までですよね?
 白雪姫さんにグレーテル。それと僕……この時点ですでに三人です。
 この上さらに白ウサギさんまでっていうのは……」

なるほど、もっともな理屈である。
どこまでも真面目な少年であるヘンゼルは、宿舎のルールを逸脱することに抵抗があったのだ。

しかし白ウサギも、当てずっぽうでこのメンバーの部屋にやってきたわけではない。
ヘンゼルが異議を申し立てることも予想したうえでの来訪なのである。
もっとも、わずか20秒で了承されたことに関しては完全な想定外であったが……。

「三人までっていうのはあくまで基本的なルールだよ。
 それにその根拠は各部屋にベッドが三つしかないということなんだ。
 三人以上部屋に入ると、世界が滅びるってワケじゃない」

「そ、それはそうですけど……」

「白雪姫はともかく、ヘンゼルとグレーテルは二人で一つのベッドが使えるだろう?
 そうすればベッドが一つ空く。そこに寝かせてもらえれば構わないよ」

「あ……えっと……その……」

畳みかけるような白ウサギの言葉に、何も言い返せないヘンゼル。
だがその様子は、反論ができないというよりは、言い出しにくいことがあるといった感じであった。

「そ、そうだ!だったら僕がほかの部屋に行きます!
 そうしたら人数の問題もなくなりますし!」

「いや、そこまでしてもらうほどじゃないよ。
 元々の住人を追い出してまで転がり込むつもりはないし」

「そうですよー?ヘンゼルくん。みんな一緒がいいのです♪」

「いっしょー!」

「ああああぁぁ……もう!そうじゃなくってえぇぇ……」

そんな、口ごもる少年の「言いたくても言えないこと」を暴露したのは、やはりこの少女であった。

「ていうかさー?今もベッド、ひとつあいてるよー?」

「うわー!や、やめてよグレーテル!」

「ベッドが今も空いてる……?だったらなおのこと問題ないじゃないか」

「そ、そうなんだけど……」

「……いや、待てよ?
 そもそもどうして三人部屋にベッドが三つでひとつ空きがあるんだい?」

「あ……あうあうあう……」

ヘンゼルの様子は明らかにおかしい。顔は真っ赤で、変な汗もかいているように見える。
そしてなぜか、白雪姫へ視線を送っては逸らすの繰り返し。
……隠し事でもしてるのかなと、白ウサギは直感でそう感じ取った。
そしてそんな白ウサギの疑念と直感を、今度はこの少女の一言が吹き飛ばした。

「ヘンゼルくんは私と一緒のベッドで寝ているのです♪だから大丈夫なのです!」

「なのですー!」

「あ……ああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

もはやヘンゼルの声は言葉になっていなかった。

ええと、つまりどういうことだ?
グレーテルはベッドで一人大の字になり、白雪姫はヘンゼルを抱きしめてそれぞれ眠っている、と?
……ああ、容易に想像がつくな……。

白ウサギは自身の想像が限りなく現実に近しいことに絶対の自信を持った。
だからどうしたと言われればそれまでな、あまりにも無意味な自信ではあるが……。

「……それ、色々な意味で大丈夫じゃなくない?」

「だっ……!そっ、そうですよね!ですよねっ!」

人間たちの倫理観を身につけた白ウサギには、それが好ましくないことだという程度の理解力はある。
それゆえ、呆れを込めた声色でそう呟くと、当事者であるはずのヘンゼルが盛大に乗っかってきた。
そのあまりの必死さに白ウサギは「いや、君のことを言ってるんだけど」と口にしかけたが、なんとかその言葉を飲み込んだ。

「だ、だからですね?今回白ウサギさんがこの部屋に来たのを機に、
 僕は別の部屋に移り住むべきだと思うんですよ!」

「ほえ?なぜなのですー?」

「なんでー?」

「だってほら!やっぱりルールは守らなきゃいけないし!」

「でもでもベッドは空いてるのですよー。問題はないのです♪」

「で、ですからぁ~!」

ああ、なるほど。ルールだなんだと並べててはいるけれど、ヘンゼルはなんだかんだで女の子と同室であることが恥ずかしかったのか。
それでなんとか理由を付けて、この部屋を出ていこうとしているんだな。

白ウサギはヘンゼルのその必死な様を見て、唐突に理解した。
小さな男の子なのだから、そんなことを気にする必要はなさそうだけど。
そう思いつつもあえてそれは口にしなかった。
もしそんなことを言えば、どっちに転んでも彼は「いろいろな意味で」追い詰められてしまうだろうから。
ちょっとだけ空気を読んだ白ウサギである。

それにしてもちょっとこれは面倒だな。
今の様子では、自分がこの部屋に来るとなるとヘンゼルは意地でも出ていこうとするだろう。
だけどさっき確認した部屋割りでは、ヘンゼル一人が転がり込めそうな男部屋はなかったはずだ。
となれば、ヘンゼルも宿無しで放り出されることになる。
それは……好ましくないな。

「だ、だいたいおかしくないですか?
 なんで白雪姫さんは僕と一緒に眠るんですかぁ~!」

「ヘンゼルくん、あったかくて……えへへ~」

「えへへ~……じゃありませんよっ!」

「ヘンゼルあったかーい!ボカーン!」

「それ、あったかいんじゃなくて爆発してるから!なんかおかしいから!」

彼らはこのままにしておいた方がいいな。
その方が面白そうだし、何より面倒に巻き込まれずにすみそうだ。
そんなことを考えながら白ウサギは、いまだ部屋の中で大騒ぎする三人を尻目に静かに部屋を出た。

今日の宿となる、次の部屋を探すために……。



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